原大門 写真家|インタビュー
これってファッション写真!? 山の景色の美しさとユニークな姿をした人物が目を引きます
原大門さんは一年前の『ひとつぼ展』で、自作の物語をベースに山の上で自らサーファーに扮し、それをセルフタイマーで撮影した作品を出品しました。審査会では、「写真というカテゴリーに留めておくのがもったいない」「スケールの大きな写真」「一見、色物として見られがちだが、しっかりした写真表現」と、審査員の方々から可能性を見出され、見事グランプリを獲得しました。セルフポートレートの手法を使い、特異な世界を写真に収めている原さん。その作風はどのようにして生まれたのか? 制作背景をうかがいました。
山
『ひとつぼ展』のグランプリ受賞作品「サーフィンドリーム」も今回の作品も撮影の中心は山です。多分テレビで見て、山って凄いなーって思ったのがきっかけだったのかもしれないです。初めての本格的な登山で、サーフボードを小脇に抱え、重い機材を持って登ったのできつかったですね。山の中では、いい場所だなあと思ったら、セッティングして、人が通り過ぎるのを待って、服を着替えて撮影、その繰り返しです。山選びは、登山者のホームページで、写真とかコメントを見て決めています。登る前に、“こんなものが出来たらいいな”くらいの大まかなストーリーを考えて、細かいところは撮りながら組み立てていきます。登ってみないと作品にあう風景かどうか分からないですから(笑)。今回の個展では、あえてそのストーリーを追わずに、夢や記憶の断片みたいな感じで構成します。
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ファッション写真に憧れる
写真を始めたのは、大学の時に写真同好会に入ったのがきっかけです。その頃、荒木経惟さんの私写真ブームもあって、僕も自分の身の回りのものを撮っていました。大学は単位が足りなくて中退。しばらくフリーターをしてから、六本木にあるスタジオに入りました。ファッション写真にすごく憧れていて、ブルース・ウェーバーとかピーター・リンドバーグとか好きでしたね。スタジオに入ってみたら、ファッションの撮影があまりないんです。それでほぼ毎日スタジオに泊まり込んで、夜になったら仲間同士で撮りあっていました。毎晩青山ブックセンターにも行って、世界中のファッション雑誌を見てました。特にイタリアン版『ヴォーグ』が大好きでしたね。その後、写真家の半沢克夫さんのアシスタントに2年くらいついて、独立しました。
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“ファッション写真”にこだわる
独立しても全然仕事がなくて暇だったので、ギャラリーをまわって現代アートを見てました。ナムジュンパイクのビデオアートとかを見て、かっこいいなーって思っていました。やっぱりファッションの仕事がしたくて、他の誰でもない自分にしか撮れないファッション写真を撮りたくて、友達にモデルを頼むんですが、ことごとく断られた(笑)。モデルもファッションもなかったので、しょうがなく自分が裸になってセルフヌードを撮り始めたんです。ある意味、作られたフィクションの世界をファッションと呼ぶとすると、それを自分のできる範囲で再現しようと思いました。それが山の中にサーファーがいてっていう「サーフィンドリーム」に繋がってくるんです。自分の写真にファッション雑誌に出てくるようなモデルが立ってたらすごくかっこいい。僕の中では、ただモデルが僕だっていうだけのことなんです。今回の作品も同じ視点です。
これからどうなるかは分からないですね。仕事もしたいです。でも自分がこれだと思うものを営業に持って行って、それで仕事をもらえない限りダメだと思ってるんです。今回の作品がどう受け止められるか……。それと、ムービーも撮りたいんです。今は写真が一番身近にあるからっていうだけなのかもしれない。ただムービーをダラーって撮ってるだけでもおもしろいんじゃないかなって。ムービーやりたいですね。
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1971年福島県生まれ
明治大学文学部中退
写真家半沢克夫氏に師事
独立後、フリーランスとして活動
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